かえってきた⭐️cui cui diary〜 ティータイムにessayを。

おもに旅日記、日々の中の新鮮さを保つこと。

始まりの国、アイスランドへ。スナイフェルスネス半島編。

アイスランドには、アルバとよばれる妖精や精霊がいて、石や岩に宿っていたりするそうだ。そしてアイスランドの人々が、日本人にとっての富士山のように特別でことさらに神秘的に思う聖地のような場所が、スナイフェルスネスヨークトルという休火山である。(ヨークトルは氷河という意味で、山頂に真っ白な氷河をたたえている。)

そんなことを梨木香歩さんの文章で読んでおり、妖精がいるならば是非とも行かん、ということになった。
 
みっちょんと旅の計画を立てている時に、妖精にまつわる話をしていると、小さい頃の体験を話してくれた。
その話をスカイプで聞いていた時ロンドンは昼の12時ごろ、東京は夜の11時すぎ。夜の東京で聞く妖精(かなにか)の話は、なんだかちょっぴりモノノケ風に聞こえてしまった!怖いやないの!
 
さて、そういうわけで4日目はスナイフェルスネス半島をまわるツアーである。
朝ゲストハウスの前で、おなじみの太極拳の練習をしてみる。ようやくそんな余裕もでてきた。太陽はずっと空にとどまっているけれど、不思議なことに朝はちゃんと朝の空気がするのだった。モヤが晴れて澄み渡っていくような、朝のあの新鮮さが訪れていた。
 
スナイフェルスネス半島はレイキャビク市内から離れた北西のほうにあり、このツアーは最も所要時間の長いツアーだ。中型のバスに、穏やかなおじさんのガイドさんの案内で出発した。
 
相変わらずの英語力の私たちは、ここでもスナイフェルスネス半島を回るツアーとしか知らず、どこかでその聖なる山を拝める以外に、いったい何処にいくのやら気持ちは行き当たりばったり。
 
スナイフェルスネスめざして走りだしたバスは複雑な海岸線沿いの道を走り、入り組む大小さまざまな入江をまっすぐに突っ切るように、遠浅の海の上にかかる橋を渡っていった。そしてレイキャビク市内の海岸からいつも見えていた、あの上が平らな台地のような山のお膝元をぐるっと回り、さらに先へと進む。ひたすらのどかな海岸線が続き、時々白や黒の羊や馬がのんきに寝そべっていたり、でこぼこの大地のくぼみに上手くハマって和んでいたりする。雄大で牧歌的な景色を眺めながら、トイレ休憩を1度はさみ、ようやくスナイフェルスネス半島についた。
 
ここは天気の悪いことで有名らしいけれど、この日はいいお天気だった。バスから山々を眺めていると、晴れとはいえ高いところにはずっと雲がかかっていた。しかし一瞬雲の切れ目があって、スナイフェルスヨークトルがその姿を現した瞬間があった。左右にぴょこんと突起がある白い山。「あっ・・」と目がすいよせられ、少しのあいだ心が真空になる。いいもの見たな、と思った。
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一枚だけ写真がとれていた!
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雲にかくれるとこのような姿になる。でもこれでも充分きれい。きっとこの見え方にもアイスランドの人は親しみをもっているのだろう、こういう絵がどこかのレストランにかかっていた。
 
それからアザラシのいる海岸へ。
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風に乗れそう!
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メルヘンな草原で思わずダッシュ❗️意味もなく走る子供の気持ちがわかる!笑
写真にすると合成のような小ささで、妖精になった気分に。
海岸でアザラシをみたあとは、近くの漁村へ。
山とも丘ともいい難いものに、水たまりとも池ともいえないもの。なんだか不思議な光景だった。

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天国の看板みたい。
とにかくお天気が良い。
断崖からカモメたちを見ていると、「あなた英語できる?あの崖のところをみて、ほら、カモメのヒナがいてとっても可愛いわよ!」と見知らぬおばさまが教えてくれた。でも私には全然みえなくて「見えません。あなたはラッキーです!」と言ったらおばさまの顔がぱあっとして、「そうね、ラッキーだったわね!」とキラキラした。そこに同じバスツアーのテンガロンハットをかぶったイタリア人男性が「見るかい?」と双眼鏡をかしてくれ、私も可愛いヒナを見た。後でおばさまとまた会って、「わたしも見れました!ラッキーです!」と言うと「そうね、わたしもラッキーな気持ちになったわ!」と何だかラッキーの魔法にかかった。
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お昼は広大な草原にぽつんとあるお店だったけれど、入ってみると中はとても綺麗で、海が見渡せた。入り口の壁に『Today is a new day』と書いてある。旅のあいだは毎日そういう気持ち。
サンドイッチは食べ飽きてしまったので、マッシュルームスープとアップルケーキを食べた。どっちも素朴でかなり好みの感じ、すっごく美味しい!
 
午後はいくつも立ち寄りポイントがあったが、印象的だったのはまさかの洞窟(洞窟だけは行くつもりなかったのに)にも行ったことだ。ヘルメットをかぶって、ライトをもって、長い螺旋階段をおりて。溶岩がつくった洞窟は、この世にまったく陽の当たらない世界があることを見せてくれた。一番奥の空間までいって、ガイドさんがみんなにライトを消すように言い、自分の手も何もみえない完全な暗闇を味わった。白夜の中にいたので久しぶりの暗闇は少し心を落ち着かせてくれた。あの暗闇はひっそりといつでもああやってあるんだ。世界の片隅で。
 
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溶岩の生み出したたくさんの不規則な形に、命を見いだしたくなる気持ちもわかる。
何か宿っていそうな岩と向き合ってみた。
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そしてこれが、アイスランド中でとても良くみた、もけもけの苔たちだ。溶岩がつくるギザギザした一瞬の造形を、じっくり時間をかけてしかしくまなく覆いつくしていく苔たち。溶岩は面取りされて凹凸を減らし、次の緑が生まれ始める。
 
 
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小さな滝の裏側より。(ここに入り込むには、けっこう足場の悪いところを通らなくてはならず、みっちょんが一番足場の悪いところではこちらを見ながら一気に駆け抜けてきてびっくりしたけど面白かった。足元みなはれ!笑 キミは、肝心なところで石橋を叩かず走り抜けてしまうタイプ?!)
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この滝の周りには小さなクレーターがいくつかあり、クレーターにときめいている自分に気づいた。
 
帰り道、バスからまた山々をみていると、夕方の草原を一頭の馬が走っているのが見えた。その先に目をむけると、一頭だけじゃない、群れが走っている様がみえた。夕方の少し柔らかくなった光をうけてきらきらと、艶やかな身体の馬たちが走っていた。はっとするほどその姿はとっても綺麗だった。何で走っているんだろう、でも馬は走るための生き物なんだ、あんなに綺麗なんだもの、、と一瞬の光景に見とれた。みっちょんもしっかりと見ていた。
 
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夕食は、昨日Sさんに教わったレストラン「KOL」へ。生魚美味しい!
シュガーレモンというレモンを炙ったものを絞って食べるのがとても美味しかった。
サーモン、魚卵、ホタテ、エビ、ムール貝など。
 
夜寝るときまで、あの馬たちの余韻が残っていた。良いものみたね。なんかあれを見れただけで充分素晴らしかった、と言い合いながらしみじみとした。
 
いい日だった。
明日は、北の街に行くので、1泊ぶんの荷造りをしてから寝る。