これは、筆者が遭遇したとある洋食屋での一場面である。（無駄に長いです。）
都内、某日。
ある用事のまえに、軽く昼食をたべようと歩いていると、洋食屋が見えた。
名前は漢字３文字、看板に家紋がついていて、老舗の雰囲気がよい。
入口に著名人のサインがある。
メニューをみるとフライやソテーがオススメのようだけど、軽めのカレーもお手頃価格である。
軽いけどおいしいものがよかったので、カレーを目当てに迷わず入る。
開店したばかりで、私が最初のお客だった。
フロアにはおかみさん（おばあさん）がいて、席についてすぐに
「はい、なんにしましょ～」と、きいてきた。
おばあさんはレジやほかの席の準備をしながら、こちらを見ないできいてきた。
常連客が多いお店のかんじだった。
あ「カレーください。」
店「Aランチね～。はい、Aランチひとつ～」
厨房「え？何ランチ？・・A？Aでいいのね？」
なにやらしきりにAランチと連呼されている。おばあさんと厨房の連携が心なしか悪そう・・。
私はAランチとは言ってないけど、
今日のAランチはカレーなんだぁ・・。
と思っていると、おばあさんがお水とメニューをもってきた。
おばあさんは足が悪いようだ。
メニューは各テーブルにひとつ置いておくものらしい。
もう頼んだけど、はじめてのお店なのでしげしげとメニューをみる。
～ランチ～
・A日替わり
・Bポークソテー
・ｃ？？？（忘れた）
Aは日替わりで、それが今日はカレーなのか・・。
しかしなかなかカレーはこず、厨房からはジュ～～とフライの音がしてきた。
ん？？
もしかして・・カレーライス、レーライス、エーランス・・Aランチ？？
おばあちゃん。聞き間違えた？
すると、男性客が一人入ってきた。
店「はい、何にしましょ。」
客１「え～と、Aランチはなに？」
店「今日は、コロッケと白身魚のフライとチキンソテーの盛り合わせですよ」
あ（あぁぁ。私はカレーライスがたべたいのに、きっとこの盛り合わせがきてしまうんだな・・。食べれる気がしない・・。でももしもこのおじさんが・・。）
客１「じゃあAランチ」
あ（はいきたー！）
あ「あの～すみません。」
店「はいはい。」
あ「私さっきカレーライスを頼んだんですけども・・・、」
店「え？・・・ちょっと待ってくださいね。Aランチ頼まれてますよ。」
あ（違うんだよー！）
あ「カレーライスを頼んだんです。マスクしてたから聞こえづらかったと思うんですけど、カレーライス頼んだつもりだったんです。なので、もしよければ私のAランチを、そちらの方に・・・」
店「ちょっと待ってね。カレーライスひとつ！」
と、おばあちゃんは厨房に説明にいき（だからさっきのお客さんが本当はカレーで・・と聞こえた）、ぐっと親指をたてて戻ってきた。
店「大丈夫ですよ！」
そして先にできたAランチは客１へ、客１は「いいんですか？」と嬉しそうに、
これでみんながwinwinでよかった！
と思いカレーを待つ。
そこに客２が来店。常連のようで、Aランチのチキンは苦手でなぁとつぶやく。
おばあちゃんは「はい、何にしましょ」といったが細かいことは苦手とばかりに、
店員２に「何か言ってるから聞いてあげて。」とパスする。
店２「はい、どうしましょう？」
客２「いや、チキンは苦手でね。」
店２「じゃあ生姜焼きにしましょうかね、Aランチのチキン生姜焼きにできますか～？（厨房に）はい、じゃあそれでいかがでしょう？」
客２「ありがとう、それで。」
そしてすぐに若い男性客ひとり（客３）が来店。オムライスにエビフライトッピングしている。これもおばあちゃんはパスで店員２が対応している。
カレーがくる前に、おばあちゃんが厨房のほうで今度はビールのサーバーみたいのをいじって、良くわからないことになって「ちょっと助けてよ」と言っている。
厨房からはちょっと苛立つ声で、白いボタンを押せと言っている。孫とおばあちゃんて感じだ。
ここまでお客は全員ひとりなので、お店の中はおばあちゃんと厨房の声だけするのでどうしても聞いてしまう。
ようやくカレーがきた。豚肉のブロックが２つのったシンプルなカレーだったけど、すごく美味しかった！うまうまうまー！こういう普通においしいシンプル洋食カレー最高だなぁ。この近くで働いてたら絶対ランチくるなぁと思った。
そのころにはまた男性ひとりの客４（ゆっくりビールを飲みながらBランチを待つ）と、老夫婦の客５、女性ひとりの客６も入り、店内は満席となった。
やっぱり人気店のよう。ほとんど一人客。
そして私の隣に座った客５の老夫婦は、カレーと、特選盛り合わせというのを頼んでいた。
おばあちゃんが「カレーと、盛り合わせ」
というと厨房から「盛り合わせって、特選？特選のこといってるの？Aじゃないよね」
とまた苛立つ声があがり、おばあちゃんは冷静に応戦していたが、
客５「・・なんかめんどくせぇな。やめるか？」
と呟いていた。
あ（いやいやいや、あなたの頼んだカレーおいしいから、食べてってよ～！ちょっと厨房が一見感じ悪く見えるけど、問題ありませんから！）
客５「・・・まいいか。どんなもんかとりあえず食べよう。な。」
あ（・・ほっ！それで正解よ。）
客６は優雅にふわふわオムライスを注文。
客１はご飯をおかわり。
客４はビールを堪能。
そして私は店内の様子を面白く見つつ、カレーをフォークで完食。
ほんとは客５がカレーをたべて機嫌をなおすところまで見届けたかったが、
満腹。ごちそうさまでした。
