かえってきた⭐️cui cui diary〜 ティータイムにessayを。

おもに旅日記、日々の中の新鮮さを保つこと。

ダイアリー30 蕎麦屋のぬし

神田に有名なお蕎麦屋さんがある。

蕎麦といえば江戸っこ、酒が飲みたきゃ蕎麦屋にいけと鮨屋では言われる、なんて話もあり、お蕎麦屋さんの焼鳥や湯葉刺しや天たねなんかも、ツマミ好きの私には最高である。

 

リモートワークになってから、

たまーに、この蕎麦屋を好きな母と待ち合わせて、お昼を食べにいくことがある。

このお蕎麦屋さんには、必ず1人の常連さんが、いつ来ても同じ席で、甚平をきて、お酒を飲んでいる姿がみえる。わたしは、蕎麦屋のぬし、と思っている。

毎日、必ず同じ席で、ゆっくりとお酒を飲んでいる。まさに江戸っこである。

携帯や本などは、手元に置いたためしがない。

私たちより遅くくることも、早く出ることもない。

身ひとつで、何を思いながらか、顔を赤くすることもなく、酒を飲んでいる。

このうえなく、かっこいいのだ。

このおじいさんにとれば、私たちは目の前を通り過ぎていく客のひとりだった。

 

まだ暑い盛りに蕎麦屋を訪れた時、母が帰りがけにぬしに話しかけていた。

私はすでに出口近くで、遠くからその光景をみていた。何やら笑顔になり談笑して、ぬしは会話のおわりに私にも視線をむけ、どうも、と会釈してくれた。私が母の連れだと、きちんと知っていたのだった。こちらへの配慮があったことに私は感動してしまった。

見るともなくぬしは店内の様子を眺め、知っていたのだった。やはり生粋の江戸っ子とのこと。

 

そして初めてきちんと表情を拝見して、ふと、なんだか前に見たより随分と若く、、若返っているように思えた。

おじいさんだと思っていたけれど、、いったいいくつなのだろう。

 

目の前を流れていく客の出入りを見ながら、今日もどんな気分でお酒を飲んでいるのだろう。